真鍮は黄金色に輝く美しい金属で、アクセサリーや金管楽器などに使われています。
この金属で作られたものを一度も見たことがないという方はまずいないでしょう。
しかし「真鍮とはどのような金属なのか」と問われて、うまく答えられる方は少ないのではないでしょうか。
この記事ではそんな真鍮について、加工するという観点から特徴や扱い方について解説します。
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真鍮とは銅と亜鉛の合金のうち、亜鉛の割合が20%以上であるものをいいます。
「黄銅」という別名があるとおり、きれいな黄金色が特徴となっています。
また、英語では「Brass」といい、音楽におけるブラスバンドという言葉はここから来ています。
金管楽器は真鍮で作られているからです。
ほかに真鍮で作られているものとしては、金属模型や水洗トイレの給水管、そして5円硬貨などが挙げられます。
また黄金色の美しい見た目や、酸化することによって古びたイメージを醸し出すことから、アクセサリーにもよく使われています。
加工方法はいくつかありますが(具体的なことは後述します)、主に曲げたり伸ばしたりする「伸銅品」として使われています。
亜鉛がどれくらい含まれているかによって特性が大きく変わるため、「六四黄銅」「七三黄銅」など亜鉛の比率を表現した名称で呼ばれることもあります。
日常生活においてもあちこちに見られる真鍮ですが、その加工方法として代表的なのは以下の5つとなります。
それぞれどのようなものなのか、以下で1つ1つ解説します。
曲げ加工は、真鍮を扱う方法の中でもとくにポピュラーなものです。
曲げる方法はいくつかあり、折り曲げ機を使って直接的に曲げる方法のほか、R曲げ・V曲げ・Z曲げといったさまざまな派生方法が存在します。
発注の内容によって方法を使い分けていきます。
それ以外には、プレス加工とプレスブレーキ加工を用いることで薄板状の素材を曲げるというやり方もあります。
この方法はコストがあまりかからないので、小ロットの発注において役立ちます。
真鍮には、曲げ加工を施すことにより強度が増すという性質があります。
切削加工とは、文字通り真鍮を削っていく方法のことです。
エンドミルやドリルといった回転工具を使う「フライス加工」や、素材のほうを回転させてバイトで削っていく「旋盤加工」などの方法があります。
この方法には、精度の高さを求める発注にも応えることができ、さまざまな形を自由に作れるといったメリットがあります。
一方で金型を使って大量生産するわけではないため、製品1つあたりの単価が高くなってしまうというデメリットがあります。
切削加工については、別の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
【関連記事】切削加工3種類を解説!旋削加工・フライス加工・穴あけ加工とは
溶接加工とは、複数の真鍮を溶接によってつなげる加工のことです。
注意点としては、真鍮の熱伝導率が非常に高いことが挙げられます。
そのため接着面だけでなく本体そのものを溶かしてしまう危険性があり、正しく溶接するには高い技術が求められます。
上記の問題への対策として、真鍮を直接溶かしてつなげるのではなく、より低い温度で溶ける銀ロウを使って真鍮自体を溶かすことなく接着させる「ロウ付け」という方法が比較的多く使われます。
切断加工とは、レーザー切断機やシャーリング、タップ、タレパン、カッター、チップソー、ロータリー切断機などを使って、真鍮をカットする方法のことです。
たとえばレーザー切断機を使ったレーザー加工では、金型を使うことなく柔軟な形に薄板を切断できます。
素早くおこなえるのも特徴です。タレットパンチプレス加工は金型を用いたプレス加工のことで、柔軟性に劣る反面、細かい穴を開けるなどの場合においてよりスピーディーなのが特徴です。
鋳造加工とは、砂や石膏などで作った型に溶けた真鍮を流し込んで、思い通りの形に加工する方法のことです。
さまざまな形を自由に作れるのが特徴ですが、その反面、製品中に気泡ができる場合があり、強度が必要な場合にはあまりおすすめできないものとなっています。
この方法を用いて作られる製品としては、蛇口やアクセサリーなどが挙げられます。
弊社では、真鍮を加工できる設備を保有しております。
ぜひ設備紹介のページでご覧ください。
加工という観点からみた真鍮の特徴としては、以下の6つが挙げられます。
どのように加工したいのかによって、どの性質が重要になってくるかも変わってきます。
以下の解説を読んで一通り把握しておきましょう。
真鍮には展延性が高いという特徴があります。
展延性という言葉はあまりメジャーではありませんが、「薄く広く伸ばしたり、引っ張って細く伸ばしたりすることができる性質」というのは字面から何となく想像できるのではないでしょうか。
展延性は真鍮の特徴のなかでも代表的なもので、このため何かを作る方法として「曲げて伸ばす」というやり方がポピュラーになっています。
真鍮は電気をよく伝える性質を持っています。
電気を通しやすい金属の代表例として銀があげられますが、銀の電気伝導性を100とした場合、真鍮の電気伝導性は97以上となります。
この性質を利用する形で、コネクターやコンセントなどの接点部にも使われています。
ご家庭のコンセントをじっくり眺めてみて、黄金色に輝く部分が見つかったら、そこが真鍮製であると考えてよいでしょう。
熱間鍛造性が高いのも真鍮の特性です。
熱間鍛造性とは、加熱した状態においてさまざまな形状に加工しやすい性質のことです。
この性質のため、真鍮でできた工業部品には複雑な形状のものがたくさんあります。
熱しただけで簡単に加工できるので、複雑な部品を低コストで作るにはぴったりだからです。
真鍮は銅と亜鉛の合金であり、銅も亜鉛も削りやすい性質の金属であるため、いわゆる切削加工性が高いのも特徴となっています。
この性質により、精密加工を施すのにちょうどよい金属として使われています。
精密加工された真鍮製の部品は、工業部品や時計などに使われています。
また正確なサイズと形状が求められるボルトやナットなどにも利用されています。
真鍮には耐食性が高いという特徴もあります。耐食性とは、ある環境下において腐食しにくい性質のことです。
「錆びにくい」という表現を使えば分かりやすいのではないでしょうか。
真鍮は空気中で表面が酸化によって黒ずんでいくので、見た目の印象としては簡単に錆びてしまうように感じられます。
しかし黒ずんだ部分が酸化皮膜となって内部を守るため、結果として全体が腐食することにはなりません。
この性質に注目して、他の金属を使えない場面に使われることがよくあります。
真鍮は置割れが発生しやすい金属です。
置割れとは、時とともに大気中の成分と結びついて腐食していき、いわゆる「粒界腐食」を起こすことです。
置割れを避ける方法としては、塗装やメッキを施したり、焼きなましによって内部応力を取り除いたりといったものが有効です。
真鍮の欠点としては、酸化によって黒ずみやすいことが挙げられます。
水分にも弱いので、湿度の高い環境に置かれた場合には黒ずみの進行はいっそう早くなります。
対策としては、クリアコートやニッケルメッキなどで表面処理をおこなうことが挙げられます。
真鍮の色を活かしたい場合にはクリアコート、色が変わっても構わない場合にはニッケルメッキが使われます。
他にも、ゴムやラテックスを分解腐食させてしまうという欠点もあります。
これらに触れる機会のある部分には、真鍮を使わないほうがよいでしょう。
真鍮という金属について、加工の観点から性質や扱い方を解説しました。
真鍮は美しい見た目を持った金属で、それを生かした利用法が昔から存在しています。
また科学的にわかってきたさまざまな性質に着目する形で、現代においてはさまざまな部品の材料としても使われています。
この記事を参考にして、真鍮の上手な利用方法を体得してください。
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