治具や半導体、医療機器など、繊細な製品製造を担う精密加工。
わずかな傷やズレが製品パフォーマンスに大きく影響するほど、高度な加工技術が求められます。
小型化が進む現代、益々注目が集まっている一方で、精密加工がどのような技術なのか詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、弊社が長きにわたり携わってきた精密加工について、求められる業界や精密加工の種類、注意点を解説します。
精密加工の概要を知りたい方や興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
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精密加工とは、マイクロメートル (※1)レベルでの加工に対応できる加工方法のことです。
加工する精密製品のサイズは、およそ10~500㎜以内が一般的です。
それ以上の精密さが求められる加工は超精密加工と呼ばれ、ナノメートル(※2)レベルでの加工が可能となります。
製品の小型化が進む現代において、精密加工技術はなくてなならない存在になりました。
精密部品を取り入れた治具や測定具のほか、自動車の部品や半導体などの製造にも要求され、あらゆる分野でニーズが高まっています。
とはいえ、マイクロメートル単位で行われる精密加工は、一定の基準をクリアしなければ実現が難しいことが懸念点です。
たとえば、金属は温度による形状変化が起こりやすいため徹底した室温管理が求められるうえ、マイクロレベルでの測定技術も欠かせません。
工作機械の性能によっても加工品の完成度が大きく左右されるため、設備の充実度も重要なポイントの1つです。
南条製作所では、あらゆる精密加工に対応できる各種加工設備を揃えております。
詳しくは設備紹介にてご確認ください。
※1:1マイクロメートル=0.001㎜ ※2:1ナノメートル=0.001マイクロメートル
前述したように、精密加工は現代のものづくりにおいて欠かせない技術の1つです。
ここでは、精密加工が求められる以下3つの業界について解説します。
自動車を構成する部品の中でも、心臓部となるエンジンやトランスミッション周りは非常にデリケートで、高精度の加工技術が求められます。
使用する素材によっては、加工難度が上がることも珍しくありません。
部品の小型化や軽量化が進んでいる点も自動車業界の特徴です。
製品サイズが縮小されることでより微細な加工が必要になるうえ、同等のコストを維持しつつ品質を保つ技術が継続的に求められるでしょう。
また、自動車は製品に不備があれば人命に関わることも。
高性能な製品開発はもちろん、人々の安全を守るためにも、より精密な加工技術が求められてる業界です。
IT業界の発展を支えるものの1つに、半導体の進化があります。
半導体は多くの複雑な部品で作られており、極微な傷でさえも許されないデリケートな製品です。
製造過程でも繊細な技術が求められ、部品ごとに適した素材を適切な加工方法で製造しなければなりません。
また、半導体を構成する各部品が特殊な形状をしている点も、高い技術を要する要因の1つに挙げられるでしょう。
部品ごとのサイズが極小であることや素材に合わせた加工方法が求められること、決められた形状に作り上げることが半導体製造でのポイント。
これらを実現するためには、高い精密加工技術が必要になるのです。
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航空機は大きく分けて、機体・エンジン・装備品で構成されています。
中でもエンジン周りの部品は、航空機の動作に直結する重要な役割を担います。
近年、特に重要視されているカーボンニュートラルの観点からも、エンジン製造における技術向上は優先すべき取り組みです。
また、自動車業界と同じように航空機業界でも安全性の確保は必須であり、エンジン部品には高い品質が求められる点も特徴の1つ。
人命に関わる恐れがある点や技術的向上が求められ続ける点においても、精密な加工技術を必要とする業界といえるでしょう。
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精密加工と一口に言っても、その加工方法は目的や素材によって多岐にわたります。
ここでは、精密加工の5つの種類について解説します。
レーザー加工とは、レーザー光を当てて金属を加工する方法です。
ワークに触れることもなければレーザー光の範囲もわずかなため、材料にかかる負担が少なく切断面の変形が押さえられる点が特徴です。
レーザー加工では切断のほかにも、穴を開けたり彫刻したりもできます。
また、レーザーマーキングといった文字や図形の印づけができるなど、加工方法の中でもバリエーション豊富といえるでしょう。
また、木材やゴム素材の切断にも適した加工方法です。
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ホーニング加工とは、ホーンの周りに取り付けられた砥石をワークの内側に押し付け、内面を精密に削り上げる加工方法です。
一次加工を終えたワークの精度をさらに高めたい場合に使われる手法として知られています。
1ミクロン以下での研削が可能で、誤差が許されない精密な加工技術を要する場面にも対応可能。
内面研削の方法はリーマ加工やNC研削盤を用いたものもありますが、ホーニング加工の方が高い精度で仕上げられる点が特徴です。
放電加工とは、表面処理加工の1つで、アーク放電の熱を利用しワークを溶解させながら加工する方法です。
加工時、ワークは加工液に浸かっているため冷却されている状態を維持できます。
そのため、熱による変形を起こしにくいことが特徴です。
1ミクロン単位の高精度で加工できるほか、電気エネルギーの使用により硬い素材の加工も難しくありません。
切削加工に比べ、加工できる形状が多様であることや、硬い素材に対応できる点などはメリットといえるでしょう。
プラズマ加工とは、物質の第4状態であるプラズマを利用し、主にワークを切断する際に用いられる方法です。
通電するものであればほとんどの素材が加工でき、多くの素材に対応している汎用性の高さが特徴といえるでしょう。
ほかにも、メリットが多いことからさまざまな現場で使われています。
たとえば、レーザー切断やガス切断に比べ切断スピードが速いことや厚い素材にも対応できること、曲線などの複雑な形状も切断できることなどがプラズマ加工のメリットです。
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溶射加工とは、コーティングを目的に溶融または半溶融した金属やセラミックを対象物の表面に噴射し塗布する、表面処理加工の1つです。
対象物の温度を300度以下に保てるうえ、コーティングできる材料の種類も幅広く、対象物の素材も選びません。
溶射加工された物体は、耐磨耗性や耐腐食性が向上するだけでなく、絶縁性の特性を付与することも可能です。
高い技術が求められる精密加工では、以下3つの注意点が必要です。
1つ目の注意点は、加工前の作業として機械とワークを密着させることです。
精密加工を始める際、機械のチャック面にホコリが付着しないよう注意しましょう。
マイクロメートル単位での加工が求められる精密加工では、わずかなホコリの付着でさえも機械とワークの接地面がずれる原因になります。
このとき生じたズレが、加工後の形状に大きな誤差を与えることもあるでしょう。
そのため、チャック面に付着したホコリはもちろん、傷や汚れのチェックが大切です。
加工前に洗浄したり平面出し加工でチャック面を磨いたりと、機械とワークが密着できる環境を整えましょう。
超精密加工において、より高い精度を必要とする非球面加工。
その際の注意点が、刃物の中心とワークの回転中心を一致させることです。
非球面加工は主に、レンズの製造に用いられる加工方法で、光学性能の良し悪しに影響する重要な工程。
刃物とワークが少しでもずれてしまえば、レンズの品質を下げる原因になりかねません。
そのため、非球面加工をする際は、刃物の中心とワークの回転中心がずれないよう注意しましょう。
精密加工後の清掃作業の場面で、加工後のワークを傷つけないよう注意しましょう。
切断時に発生する切りくずや加工液を取り除く際、マイクロ以下のレベルで加工されたデリケートなワークに傷をつけてしまうことが少なくありません。
わずかな傷が、製品の品質を著しく落としてしまう場合もあるため、加工後のワークの取り扱いには細心の注意を払いましょう。
精密加工は、自動車業界やIT業界、航空機業界などあらゆる分野で必要とされる加工技術の1つです。
加工方法は多岐にわたり、本記事では以下5つをご紹介しました。
マイクロ以下のレベルで実施される精密加工は決して容易ではありません。
室内の温度や徹底した品質管理が求められ、工作機械の性能によっても製品の完成度が大きく左右されるからです。
南条製作所では、わずかなズレも生じないよう厳しい検査体制のもと、品質向上に努めております。
半導体や航空機事業のほかにも各種金属加工において多くの実績がありますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
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