切削工具を使って素材に穴を開ける除去加工の1つが、穴開け加工です。
穴開け加工は、部品加工の中でもデリケートに取り扱わなければいけない箇所の1つとされています。
穴の位置が悪かったり、斜めだったりすると製品の組み立てが上手くいかず、のちの工程で影響が出やすいからです。
そのため、穴開けに関する知識や経験など作業者の技術を求められる重要な加工作業です。
この記事では、穴開け加工の種類や工具について詳しく解説しています。
加工時の注意点もまとめているため、穴開け加工の仕組みを知りたい方はぜひ参考にしてください。
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穴開け加工とは、切削工具を使って対象となる素材に穴を開けるプラスチック加工の1つです。
ボール盤やドリルなどの工具を使って、ねじ穴や軸受穴(じくうけあな)などの穴を開けるのが、穴開け加工の特徴となります。
多くの加工品には穴が1つ以上あるため、穴開け加工は金属やプラスチックといった部品加工の中で最も使用されている加工方法です。
穴を開けると聞けば単純な作業に思うかもしれませんが、穴は部品加工において慎重に作業しなければいけない部分とされています。
穴の精度が悪いと、製品の組み立てが上手くいかないといったトラブルが発生しやすくなるからです。
穴開け加工は希望通りに仕上げる必要があるため、作業者の技術を要求される加工方法ともされています。
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開ける穴の目的に合わせて加工方法は異なります。代表的な穴開け加工の種類は、以下の4つです。
穴開け加工には穴を開けるほか、精度を高めることを目的とする加工方法があります。
それぞれの特徴を知り、用途に合わせて使い分けましょう。
穴開け加工は、真っすぐな穴を開ける基本的な加工方法です。加工には、用途に合わせてドリルを使い分けて穴を開けます。
穴開け加工では、加工物となるワークにセンター穴を開けたあとにドリルで下穴を開けるのが一般的な方法で、ほかの穴加工とも共通の部分です。
ドリルを使用した穴は加工面が粗いため、さらに座ぐり加工やリーマ加工などで目的に応じた穴の形状を削り出します。
座ぐり(ざぐり)加工は、ネジやボルトを締める際に頭部が飛び出すのを防ぐ加工方法です。
加工物の穴口部を一段下げ、ネジやボルトの頭部が出っ張らないようにします。
出っ張りをなくすことで、ほかの部品や工具との干渉を防げるのはもちろん、ボルトの緩み予防も可能です。
ボルトの頭部が加工物から飛び出ていないため、デザイン性にこだわる製品にも適しています。
座ぐり加工には、座ぐりドリルやエンドミルといった工具を使用して削る場合が多い傾向です。
リーマ加工は、穴の寸法精度や内面を滑らかに仕上げる加工方法です。
基本的な穴開け加工は、穴径や加工面が粗いため十分な精度ではありません。
そのため、リーマと呼ばれる工具を使用して穴の真円度や内径の寸法を目標値へ到達させ、精度をよく仕上げていくのがリーマ加工です。
リーマ加工は、穴を少しずつ広げていく加工法のため穴を開ける機能がありません。
さらに穴全体の形状は修正できないので、リーマ加工の仕上がりを上げるためには、下穴の段階で精度を確保するのが重要です。
タップ加工はドリルで開けた下穴にめねじを作る加工方法で、タッピングやねじ切り加工とも呼ばれています。
穴の内面にねじ山を設けたねじが「めねじ」です。
ねじ山を作ることが目的のタップ加工は切削式と転造式の2つに分けられ、それぞれ特徴が異なります。
塑性変形(そせいへんけい)とは、力を除去しても元の形に戻らなくなることです。
タップ加工には、タップと呼ばれる専用工具を使います。
スパイラルタップやポイントタップなど、タップにも種類があるため用途に合わせて使い分けてください。
穴開け加工は、素材によって工具を使い分ける必要があります。穴開け加工で使う代表的な工具は、以下の3つです。
それぞれの工具における役割を知り、加工方法に応じて適切なものを選定しましょう。各工具の特徴を解説していきます。
ボール盤は金属やプラスチック、木材などさまざまな素材に穴を開けるほか、開けた穴を加工する穴開けに特化した工作機械です。
台上のテーブルに穴開け素材を固定し、回転する主軸の先端にドリルやリーマなどを取り付けて穴開け加工します。
ボール盤には以下のような種類があり、加工物のサイズや穴の大きさによって使い分けられているのが特徴です。
種類によって特徴が異なるため、加工物に合ったボール盤を選びましょう。
【関連記事】NCフライス盤とは?旋盤・マシニングセンタとの違い | 切削加工で活用
ドリルは穴を開けるための切削工具で、機械加工の中で最も使用される工具です。
ドリルが回転することで加工物が切削され、切りくずを排出しながら穴が開きます。
ドリルの直径は1mm以下から40mm以上のものまで幅広く存在し、なかでも広く利用されているのが螺旋状の溝がついたツイストドリルです。
溝は、切削加工で発生する切りくずの絡まりや付着による加工不良を防ぐ特徴があります。
また、ドリルはボール盤やフライス盤、電動ハンドドリルなどに取り付けて使われるのがほとんどです。
リーマは、ドリルなどで開けられた穴を広げながら正しい形状や寸法、および仕上げ加工する切削工具です。
ドリルで穴を開けると、ズレやゆがみが生じる場合もあります。
棒状のリーマを開けた穴に通すことで、所定の寸法に整えられるのが特徴です。
一般的にはボール盤やマシニングセンタに取り付けて使用されますが、手回し作業でも使われています。
リーマはドリルと異なり、先端部に切れ刃がないため穴を開けられない工具です。
つまり、穴の内面を精密に仕上げるのを目的とする穴仕上げ用工具と覚えておきましょう。
穴開け加工で精度を高めるためには、注意点を押さえておくのが重要です。
穴開け加工の際、気をつけたいポイントには以下の3つが挙げられます。
加工の質や生産コストを左右する部分となりますので、参考にしてください。
穴開け加工では工具や加工物の材質、取り付け方法、機械の性能によって切削条件が異なります。
したがって、穴開け加工の精度を高めるためには「切削速度(m/min)」「切り込み量(mm)」「送り量(mm/rev)」3つの切削条件を正しく調整するのが重要です。
切削速度の計算は、以下の計算式に当てはめると算出されます。
切削速度(Vc)=ドリル径×3.14(円周率)×主軸速度×1/1000
なお、計算で用いる主軸速度とはドリルの回転速度のことです。
最適な切削条件で加工しなければ、加工面に不要な突起、いわゆるバリが発生するほか加工速度の低下につながります。
生産効率も上がるため、切削条件は正しく調整しましょう。
引用元:KEYENCE | 切削加工の計算式
穴開け加工のときは、切削熱を低くするのもポイントです。
ドリルなどで加工物を削る際、削り取られた部分は切りくずとして排出されます。
しかし、切りくずを生成または排出するときの切削力は切削熱に変化し、不都合を生じる原因になるのです。
切削熱は工具や加工物の変形を引き起こす恐れがあるため、切削油で冷やす必要があります。
なお、切削熱を下げるためには、切削油を工具の刃先まで行き届くようにするのが重要です。
穴開け加工時には、部材をしっかり固定しないと穴位置がずれてしまいます。
さらに、加工中に工具が破損して吹き飛び、ケガにつながる危険性もあるので注意しなければいけません。
したがって、ドリルの先端がずれないようセンター穴加工するのが大切です。
また、穴が斜めになるのを防ぐため、ドリルの刃と加工物の角度を垂直に保ちます。
図面通りの正確な位置に穴を開けられるよう、部材を正しく固定するのがポイントです。
穴開け加工とは、ボール盤やドリルなどの切削工具を使って対象となる素材に穴を開けるプラスチック加工の一つです。
加工方法には、以下の種類が挙げられます。
加工方法によって特徴が異なるため、用途に合わせて使い分けましょう。
南条製作所では、あらゆる業種の部品における穴開け加工を承っております。
穴開け加工でお困りの方は南条製作所の見積依頼・お問い合わせページよりご相談ください。
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