金属を任意の形に切り抜いたり曲げたりできるプレス機械は、あらゆる製造業において使用される機械です。
プレス機械にも数多くの種類があり、油圧プレスはスライドの動力源が油圧式のものを言います。
本記事では、そんな油圧プレスの仕組みやメリットデメリット、プレス機械の種類を解説しました。
油圧プレスの特徴に限らず、プレス機械について網羅的に理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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そもそもプレス機械とは、アルミやステンレスといった板金素材に対して、上から下に向かって強い圧力を加え、切り取ったり折り曲げたりできる機械の総称です。
プレス機械には、型枠を変えれば形状を自由に変更でき、大量生産に向いているという特徴があります。
利便性や生産性が高いことから、多くの工場や製造業では当然のように用いられる加工方法です。
なお、日本産業規格のJISによると、プレス機械は以下のように定義されています。
『2個以上の対をなす工具を用い、工具間に加工材を置いて工具に関係運動を行わせ、工具によって加工材に力を加えることによって加工材を成形加工する機械で、かつ工具間に発生する力の反力を機械自体で支えるように設計されている機械』
引用元:日本工業規格 プレス機械−用語
プレス機械を動力源で分類したひとつが「油圧プレス」で、特徴は大きく分けて以下の3つを自由に変更できる点が挙げられます。
プレス機械におけるストロークとは、プレスのスライド部分が一番上に上がった状態(上死点)から一番下に下がった状態(下死点)で加圧し、再び上死点に戻るまでのサイクルのことです。
油圧プレスはストロークの長さを任意に変更し、圧力がかかる範囲を指定できます。
そのため、加工する形状の中でも「深絞り加工」と呼ばれる、深さのある加工を施しやすいというのは大きな特徴です。
一方、ストロークが長くなるため、加圧スピードは機械式に比べて遅くなります。
その点、割れやすい材料の加工をする際は、加圧スピードを求める必要もないため、油圧プレスの有効活用が期待できるでしょう。
プレス機械は、動力源もしくは機械の形状によって分類されます。動力源による分類は、大きく分けて以下の3種類です。
機械式プレス機械は、モーターの回転運動を利用して圧力をかける機械を指します。
プレス機械において広く一般的に使用される駆動形式です。
油圧式プレス機械は、正確には液圧式プレス機械の一種で、油圧のほかに水圧式があります。
現在では油圧式が大半となっていることから、「液圧式=油圧式」と捉えて問題ないでしょう。
油圧式は機械式に比べて安全性や生産性が劣るため、近年ではあまり使用されない傾向です。
人力プレス機械は、足でペダルを踏む方式や、手でレバーを押す方式があります。
生産性や精度の低さなどが要因となり、現在はほとんど使用することはありません。
次に、プレス機械の形状による分類であれば、以下の7種類に分類されます。
種類は数多くありますが、共通しているのは圧力をかけて形状を変更することです。
仕組みや目的なども機械によって異なるため、目的に応じた機械の使用が求められます。
弊社でもさまざまな機械を導入しており、その詳細は設備紹介ページをご覧ください。
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油圧プレスとは、油圧を動力源にしてスライドを上下させ、部品や製品などの対象物に圧力をかける機械です。
モーターで油圧ポンプを動かし、圧力を持った油を油圧シリンダーに送ることで、シリンダー内のスライドを上下に運動させる仕組みになっています。
油圧シリンダーとは、シリンダー中のピストンを油圧で動かし、ピストンに固定された棒などの押出・引込運動によって、プレスなどの機械的仕事をさせる装置のことです。
機械式に比べてストロークの制限が無いため、長いストロークにも対応可能。
油圧プレスは多くの生産現場で採用され、バルブを調整すれば、加圧力や動作パターンをコントロールできます。
油圧プレスのメリットは、大きく分けて以下の3点です。
油圧プレスのメリットとして、速度や圧力を簡単に調整できる点が挙げられます。
油圧プレスは、バルブを調整するだけで動作パターンを制御可能。
そのため、加工速度や圧力だけでなく、ストロークの長さなどを自由に変更できます。
機械式プレスの場合、1回ごとの圧力量が決まっているため、油圧式プレスほどに多機能ではありません。
そのため油圧プレスなら、小ロット生産から大量生産、対象物の大小に関わらず、幅広く使用できるメリットがあります。
油圧プレスは、小さな動力で大きな力を出せるというメリットも。
導入できるプレス機械のサイズが限定される場合などは、機械式プレスより油圧プレスの方がメリットは大きいでしょう。
小さな動力で大きな力を出せる上に、どの地点でも最大圧力をかけられ、圧力を保つ保持力が高いという点も合わせて押さえておきましょう。
油圧プレスは、稼働部の摩耗を防げるというメリットもあります。
動力まわりに潤滑性、防錆効果のある作動油を使用するという機械の特質から生まれた、油圧プレス特有のメリットです。
油圧プレスはメリットだけでなく、大きく分けて3つのデメリットがあります。
油圧プレスのデメリットは、液漏れのリスクがある点です。
油を出し入れするタイミングを変えることで、ストローク長(プレスのスライド部分の長さ)を容易に変更できるため機能性が高いものの、油が漏れる可能性は否定できません。
安全性の問題と、生産性が機械式に比べて劣るため、油圧プレスが使用されるケースは減少傾向にあります。
油圧プレスのデメリットは、機械式プレスに比べて音が大きい点です。
油圧ポンプを作動させると油圧回路内の作動油を巡回させる状態にするため、実際のプレス動作以外にも常時音を立てます。
特に、バルブが開いたり閉じたりするときに大きな音が発生するため、油圧回路内にアキュムレータ(内部が仕切られたガスボンベ)やサイレンサ(衝撃を吸収するホース)などで消音対策を施すのが一般的です。
油圧プレスには、空気圧ユニット(空気圧を動力源にしたプレス機械)などと比べて配管作業の手間がかかるというデメリットもあります。
空圧は、油圧に比べて低い圧力で使用し、低負荷・低圧・簡便な設備で、火災の心配が少ない安全な方式です。
一方、油圧は小さな動力で大きな力を生み出すため、高負荷・高圧・重装備になります。
いずれも動力(油圧、空気圧)を用意するための配管作業は必須で、油圧プレスの場合は、火災リスクや漏れたときの処理が面倒、高負荷・高圧に耐えるホースが必要という点で配管作業に手間がかかるのです。
デメリットの一つ目に紹介した油漏れのリスクもあり、配管作業の難しさ・手間がかかる点は、油圧プレスのデメリットといえるでしょう。
油圧プレスは、油圧を動力源にしてスライドを上下させ、対象物に圧力をかける機械です。
油を出し入れするタイミングを変えられるため、ストローク長が容易に変更可能な点や、加工速度を自由に操作できる利便性の高さがメリットでした。
一方、油漏れのリスクはつきもので、油圧ポンプを常時動作させることによって発生する騒音や配管作業の手間などはデメリットになるでしょう。
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