金属を切る方法の1つに、せん断加工と呼ばれるものがあります。
非常にシンプルな加工方法でありよく使われているものですが、なんでも切断できるわけではありませんし、いくつかの注意点もあります。
この記事ではせん断加工の仕組みや種類について具体的な解説をするとともに、せん断加工を用いる際の注意点についても触れていきます。
目次:タップで該当箇所へジャンプ
▼弊社の会社概要はコチラからご覧いただけます。
せん断加工とは、金属を切断する方法の1つで、圧力を使って加工をおこなう「プレス加工」と呼ばれるものの一種になります。
金属を加工するプロセスの最初の段階でおこなわれることの多い作業です。
金属を加工して何かを作ろうと思ったら、まずは大きな金属素材を、作りたいもののサイズにあわせて扱いやすい形に切断する必要があります。
この時点ではおおまかに切断するだけで、細かいディテールはまだ関係ありません。
つまりせん断加工とは、金属を多少雑に小さくする方法ということになります。
せん断加工は、大量生産を担っている工場の現場や、小型の精密機器部品を製作する製造現場など、さまざまなところで使用されています。
モノづくりを支える大切な加工技術であるといってよいでしょう。
金属加工については別の記事で詳しく解説しているので、ご覧ください。
【関連記事】金属加工の方法を3種類に分けて解説!機械加工・熱処理加工・表面処理
せん断加工の仕組みは、私たちの身の回りの物でいうとハサミの原理と同じです。
切断したい物体(この場合は金属)に対し、2つの物体で挟み込むように逆方向の力を加えることで、物体を破壊し切断するというものです。
物体が伸びたり縮んだりする度合いには限度があるので、硬い金属であってもそれ以上の力を逆方向に加えられれば、対応しきれずに分離します。
せん断加工はこの原理を利用しており、「パンチ」と「ダイ」の2つで金属を上と下から挟み込んで圧力により切断をおこないます。
パンチとダイのあいだにはある程度の隙間を用意します。
この隙間はクリアランスと呼ばれており、クリアランスが大きすぎると金属はちぎれたような雑な形で分断され、小さすぎると今度は工具を痛めてしまうことになりかねません。
切断したい金属の性質を見極めつつ、適切なクリアランスを設定することが重要なポイントです。
せん断加工にはいくつかの種類があり、代表的なものとして以下の5つが挙げられます。
それぞれの性質や長所・短所が異なるので状況に応じて使い分けることが大切となります。順番に見ていきましょう。
ブランク加工の「ブランク」とは、板材を意味しています。
ブランク加工とは、コイル状になっていたり、あるいは分厚い板状になっていたりする金属素材を、プレス加工しやすい板状の金属へと変える加工のことです。
別の言い方をするのであれば、これから本格的に金属加工をおこなうにあたって必要になる、板状の金属素材を用意するためのせん断加工ということになります。
ブランク加工によって多数のブランクが用意されたあと、その時作る製品ごとに1つ1つのブランクに細かい加工がおこなわれていきます。
食材でいうならば、大きな1匹のマグロから、多数のマグロのサクを切り出す工程に似ています。
トリミング加工とは、素材の余った部分を取り除くためのせん断加工のことを指します。
トリミングという言葉は、写真の加工などで知っている方も多いのではないでしょうか。
素材周辺の余計な部分を取り除いて、理想のレイアウトに近づける作業です。
金属におけるトリミング加工も基本的にはそれと同じです。
たとえば金属を板状に切り出す際、最初の段階では機械と材料の接触を調節したり、素材の流入を調整したりするための余白を設けています。
しかしこれは次の工程では必要のない部分なので、取り除いて適切なサイズにする必要があります。
そこでトリミングをおこなうことになります。
トリミングによって除去された部分はスクラップと呼ばれ、このスクラップが詰まってしまうと機械トラブルの原因となるので、定期的に排出することが大切となります。
穴あけ加工(またはピアス加工)とは、文字通り金属素材に穴を開けるせん断加工のことを指します。
穴あけ加工を行う部分をピアスパンチ、それを受ける部分をボタンダイと呼びます。
プレス機械を使って金属を打ち抜いてくり抜く作業は、クッキーを型抜きする作業にも似ています。
1つ違うのは、クッキーはくり抜いたものが本体であるのに対し、穴あけ加工された金属はくり抜かれたほうが本体であるところです。
金属加工においてくり抜いたものはスクラップと呼ばれ、不要なものとして除去されます。
コンパウンド加工(または総抜き加工)とは、金属素材に対する「打ち抜き」と「穴あけ」を同時におこなうことで、作業工程を短くするせん断加工の方法のことです。
たとえば四角い金属板から輪っかの形の金属を作り出したい場合、一般的にはまず金属板を打ち抜いて丸い形をくり抜き、その円形の金属の内側にさらに小さな円形状の穴を開けてくり抜くという、2段階の作業が必要になります。
しかしコンパウンド加工においては、上記の2つの工程を同時におこないます。
時短につながるのはもちろんのこと、1回のプレイですべてが終わるため加工位置がずれるなどのトラブルが少なく、精度の高い部品を作り出せるメリットもあります。
精密せん断加工とは、金属の切り口をより美しく仕上げる、精度の高いせん断加工のことを指します。
通常のせん断加工では、金属の断面はそれほど綺麗には仕上がりません。
ハサミで紙を切るのと違い、硬い金属を強引に力を加えて切断するので、どうしても強引に引きちぎった形跡が残ってしまいます。
それに対して精密せん断加工では、あとから磨き上げるといった作業をする必要のない、なめらかで美しい切断面を実現しています。精密部品のプレス加工などに頻繁に利用されています。
金属に対してせん断加工を行う際には、以下の3つの点に注意する必要があります。
いずれも品質を保つためにはしっかり考えなければならない要素です。以下の解説を読んで把握しておきましょう。
せん断加工とは、逆方向に2つの力を加えて金属を切断する方法です。
ここでいう2つの力は機械の2つの部品によって与えられるわけですが、その部品の隙間のことをクリアランスと呼びます。
クリアランスが大きすぎると、切断面の歪みが大きくなってしまい、後々の修正が面倒なことになります。
逆に小さすぎると、切断がうまくいかず機械が損傷してしまう恐れもあります。
また扱う金属の種類によっても理想的なクリアランスは異なるので、知識と経験に基づいて確かな設定をしておく必要があります。
せん断加工は乱暴にいえば「金属を押しつぶして強引に切断する」作業なので、あまりに素材が厚すぎると思うように切断できない事態が発生します。
金属の厚みには限度があることを事前に把握しておかなければいけません。
せん断加工を問題なくおこなえる基準は、たとえば鋼板なら13mm以下というように、素材ごとに決まっています。
金属素材を2つの力で押し切ることでせん断が完了するわけですが、その際に金属素材の端に「だれ」「ばり」と呼ばれる乱れた部分が発生します。
この部分は非常に鋭利で、完成品に混じってしまうと怪我の原因になり危険です。
だれやばりは、せん断が終わったあと加工によりきちんと除去する必要があります。
【設備紹介】弊社の設備をご覧ください。
せん断加工の詳細について、一通りのことをざっくりと解説しました。
せん断加工は金属製品を作る際の基本ともいえる技術です。
まずはせん断加工をおこなうところから全工程がスタートすることが多く、出だしでいかに高品質なものを切り出せるかが、後の作業の手間を決定するといっても過言ではありません。
この記事を参考にして、せん断加工に関する理解を深めておきましょう。
【関連】ウォータージェット加工7つのメリットと3つのデメリットを解説 【関連】切削加工3種類を解説!旋削加工・フライス加工・穴あけ加工とは 【関連】大型旋盤加工とは?実績多数の大型旋盤加工メーカーが解説
▼弊社の資料はコチラからご覧いただけます。