「ステンレス=サビない」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
機械の部品やキッチンなどの建築物にも幅広く活用されるステンレスですが、素材によって種類や特徴が異なります。
素材の特徴に合わせた溶接方法があり、適切な方法を選択することで、より高強度でクオリティの高い施工を実現できます。
本記事では、ステンレスの6つの溶接方法と3つの種類に関して、分かりやすくまとめました。
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ステンレスに限らず金属などの各材料は、溶接や切断などを通じて必要な形に加工する必要があります。
「溶接」は代表的な金属加工のひとつで、金属を溶かして接合することです。
一般的な金属加工は、金属を加熱もしくは加圧して溶かし、再度冷却して固めることで、ひとつの形に仕上げます。
ステンレスの場合、含まれる素材の種類や含有量によって特徴が異なるため、特徴に合わせた溶接をしないと耐久性に問題が生じることも。
そのため、ステンレスの溶接加工は一般的な金属加工に比べて難しいと言われます。
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ステンレスは素材の特徴や含有率によって大きく3種類に分類でき、それぞれに求められる溶接方法が異なることから、溶接加工が難しいといわれています。
種類によって加工時の特徴や反応が異なるため、素材の特徴だけではなく、溶接方法の特徴も理解しないとステンレスの溶接加工はうまくいかないのです。
ここでは、ステンレスの6つの溶接方法を紹介します。
それぞれの特徴を理解し、素材に適した溶接方法を選択しましょう。
MIG(Metal Inert Gas:金属‐不活性ガス)溶接は、後述するTIG(Tungsten Inert Gas:タングステン‐不活性ガス)溶接と同様の仕組みです。
溶接の際、空気との接触による化学反応を防ぐため「不活性ガス(シールドガス)」を吹きかけ、接合部分の強度が下がるのを防止します。
MIG溶接においては、電極に溶加材を兼ねた融解させる金属を用いて、電極を溶かして溶接する点が大きな特徴です。
溶接が早くできるため、ステンレス溶接で広く使用される方法のひとつになっています。
TIG溶接は、電極に「タングステン」と呼ばれる金属を使用し、別の溶加材を使って溶接する点がMIG溶接と異なる点です。
溶接部に不活性ガスを吹きかける点はMIG溶接と同様ですが、精度が高くて仕上がりも美しいところはTIG溶接ならではの特徴。
しかし、溶接に時間がかかることや、電極に使用するタングステンと不活性ガスに使用するアルゴンやヘリウムガスの調達コストがかかる点は、TIG溶接のデメリットといえます。
被覆アーク溶接とは、電極に材料と同種のステンレス棒を用い、被覆材(フラックス)を塗布して電極を溶加材にしながら溶接する方法です。
フラックスは溶接時に不活性ガス同様の役割を果たし、すべて手作業で行えることから細かい場所にも向いています。
アークが強い光と熱を発するため、作業時は保護メガネを用いた作業が必須です。
加えて、フラックスから発生するスラグ(金属のカス)を溶接後に除去する必要があります。
被覆アーク溶接はコストや利便性の高さから、最も普及している溶接方法です。
サブマージアーク溶接は自動で溶接できる方法で、接合部分にあらかじめ被覆材(フラックス)を塗布し、電極となるワイヤを供給する方法です。
被覆アーク溶接の場合は電極にフラックスを塗布しますが、サブマージアーク溶接は、電極とフラックスが分離されているという違いがあります。
自動で溶接できるため、同じ品質で高速に作業をおこなえるというメリットがある一方で、形状に制限がある点はデメリットと言えるでしょう。
レーザー溶接とは、光源を集光レンズで1点に集め、強力な光のエネルギーによって金属を局所的に溶かして溶接する方法です。
レーザー溶接はアーク溶接に比べて、発生する熱による影響が小さいという特徴があります。
そのため変形や焼けがわずかで、歪みが気になる製品には効果的です。
また、フラックスや不活性ガスを用いない点も、他の方法とは異なります。
レーザー溶接は他の溶接方法に比べて出力が低いため、薄いステンレスや細かな加工に向いている方法です。
抵抗溶接はレーザー溶接同様、材料そのものを溶かして溶接する方法で、材料を加圧し、電気を通して発生した抵抗熱で溶接します。
他の方法に比べて強度が高く、速度も早いという点が大きな特徴です。
抵抗溶接は、自動車ボディの加工などで使用される傾向にあります。
なお、弊社の溶接加工設備は「設備紹介」にて詳しくまとめていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
本章で紹介するステンレスの種類と特徴を理解して、それぞれの特徴に合わせた溶接方法を選択できるようになりましょう。
ステンレスは大きく以下の3種類に分けられます。
オーステナイトとは鉄に炭素などが溶け込んだ物質のことで、オーステナイト系ステンレスは、最もメジャーな種類です。
オーステナイトは、高温になると強度が高まるものの、低温でも脆くなりやすいという性質を備えています。
オーステナイト系ステンレスはこうした性質を常温でも保有しているのです。
オーステナイト系ステンレスは、他の種類よりも耐食性が高く、溶接加工しやすいというメリットがあります。
磁性がなく、加工しやすいというメリットから、機械部品で幅広く使用され、自動車部品や厨房の家庭用品などにも用いられるのがオーステナイト系ステンレスです。
マルテンサイトは「クロム」が主要成分となっており、マルテンサイト系ステンレスは、加工のときには柔らかいため加工しやすいという特徴があります。
マルテンサイト系ステンレスは「焼き入れ」と呼ばれる、熱によって硬化させる加工をする必要があるという特徴も。
さらに、焼き入れのあとに再加熱して硬さを調整することで、高度を高くする必要があります。
強度はステンレスの中で最も高く、刃物や機械のブレード部品などに使用されるケースが多い傾向です。
一方で、耐食性は他のステンレスに比べて若干落ちるというデメリットがあります。
フェライト系ステンレスはマルテンサイト系同様にクロムが主要成分ですが、より含有率が高いという特徴を持つステンレス鋼です。
フェライト系はさまざまな鋼種があり、ステンレスの性能を向上させるために、銅やモリブデンなどを添加させるケースも。
フェライト系ステンレスはコストが比較的安価で、マルテンサイト系よりも耐食性が高いという特徴があります。
しかし、ステンレス鋼の中では強度が高くないため、強度が必要な部品には向いていません。
ステンレスは、種類によって素材の含有率に差があるため特徴が異なります。
ステンレスの溶接加工には、大きく分けて6種類の方法がありました。
各方法にメリットデメリットがあり、ステンレス鋼の特徴に合わせた溶接方法が求められます。
本記事の内容を通じて、ステンレスの溶接加工に対する理解が少しでも進めば幸いです。
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