鉄鋼にはさまざまな種類があります。それぞれの特性を理解していれば、適切な鉄鋼を選択可能です。
本記事では、鉄鋼材料・材質の分類や炭素鋼・合金鋼の分類、鉄鋼の選び方を解説します。
鉄鋼業界に携わっている方、興味のある方はぜひご覧ください。
目次:タップで該当箇所へジャンプ1 鉄鋼材料・材質の分類3選1.1 分類①:炭素鋼1.2 分類②:合金鋼1.3 分類③:鋳鉄2 炭素鋼の種類4選と特徴2.1 種類①:SPC材2.2 種類②:SS材2.3 種類③:S-C材2.4 種類④:SK材3 合金鋼の種類5選と特徴3.1 種類①:SUS材(ステンレス鋼)3.2 種類②:SK〜材(合金工具鋼)3.3 種類③:機械構造用合金鋼3.4 種類④:超硬合金3.5 種類⑤:ハイテン鋼4 鉄鋼の種類と選び方5 まとめ
目次:タップで該当箇所へジャンプ
▼弊社の会社概要はコチラからご覧いただけます。
鉄鋼材料・材質には、さまざまな種類があります。大きく分けると、鉄鋼材料・材質の種類は下記の3つです。
鉄鋼材料・材質には、それぞれ特徴があります。把握しておきましょう。
炭素鋼は鉄と炭素の合金の中で、炭素量が0.02%~2%までの鉄鋼素材のことです。
主成分は鉄と炭素で、他にはケイ素・マンガン・不純物リン・硫黄・銅を含みます。
炭素鋼の中でも市販されている形状は違い、JIS規格で品種が細かく分類されています。
炭素含有量によって分けられている種類は、下記のとおりです。
炭素鋼の種類については、後述する「炭素鋼の種類4選と特徴」で詳しく解説します。
合金鋼は鉄鋼素材の五大元素に、ほかの金属元素を添加したものです。鉄鋼素材の五大元素は、下記の5つです。
合金鋼で使われる元素としては、下記のようなものがあります。
合金鋼は炭素鋼に比べて性能は上がりますが、添加する元素が多くなるためコストも高くなります。
形状や寸法のバリエーションが少ないため、炭素鋼では要望を満たせない場合に使用するのが一般的です。
鋳鉄と炭素鋼や合金鋼との最大の違いは、鉄鋼材料と加工方法が違うことです。
金属を溶かして型に流し込み、冷やして固める加工方法を鋳造(ちゅうぞう)と言います。
鋳造に適した材料が鋳鉄です。
鋳鉄に求められるのは、型が複雑でも溶けた材料がすみずみまで流れることです。
そのため、鋳鉄は炭素量を多くして、融点を下げています。
融点を下げることにより、型の中でスムーズに流れるようにしています。
ポイントは、鋳鉄は引張よりも圧縮に強いため、圧縮方向に力がかかるような設計にすることです。
炭素鋼の中でも種類があり、主に4種類に分けられます。炭素鋼の種類は、下記の4つです。
炭素鋼の分け方は炭素含有量によって分けられるため、知っておきましょう。
SPC材は冷間圧延で製造される、厚さ0.4〜3.2mmの鋼板を指します。
冷蔵庫のボディに使用されるような薄い板材です。大きな力が加わる箇所には向いていませんが、加工性は良く、主に板金機械のプレス加工や曲げ加工に使用されます。
特徴としては、炭素量は0.15%以下と低く、炭素鋼の中で最もやわらかいです。
ただ、炭素量が少ないため、焼入れの効果は得られません。用途によって、SPCCやSPCE、SPCDなどの種類があります。
SS材はSPC材の次に炭素量が多く、炭素含有量は0.1〜0.3%です。
安価で汎用性があるため、最も普及しています。
丸棒や角棒、鋼板や形鋼など様々な形状があり、汎用材としてよく使われます。
加工性・溶接性はありますが、SPC材と同様で炭素量が少ないため、焼入れの効果は得られません。
一般的にSSの後に数字が続き、その数字は引っ張り強さの最低保証値を表しています。
JIS規格でよく使われるのは、SS400です。
S-C材はSS材と同様、SPC材の次に炭素量が多い炭素鋼で、SS材の次に普及しています。
SとCの間に数字が入り、その数字は炭素量の割合です。例えば、S10Cであれば、炭素量は0.10%となります。
JIS規格にはS10C~S58Cまで20種類ありますが、主に使われるのはS45CやS50Cです。
炭素量が多いほど強く硬くなるため、SPC材やSS材よりも硬くなります。
炭素量0.3%以上になると焼入れ効果も高くなるため、焼き入れ効果も期待できます。
SK材は炭素量0.6~1.5%と、最も炭素量を含んでいる炭素鋼です。
SとKの間に数字が入り、炭素含有率を表しています。例えば、SK95であれば、炭素含有量は0.95%です。
硬さと耐摩耗性に優れており、工具としてよく使われるため『炭素工具鋼』と名づけられています。
ピンやシャフトにも使われるケースが多いです。
焼き入れをすると硬さは0.6%まで上がり、耐摩耗性は炭素量に比例して強くなります。
ただ、SK材は高温になると硬さが低下するため、高温部には向いていません。200度以下が目安です。
合金鋼の中でも種類があり、主に5種類に分けられます。合金鋼の種類は、下記の5つです。
合金鋼の分け方は細かいため、チェックしておきましょう。
SUS材は合金鋼の中で最もよく使われ、汚れやサビに強いです。
鉄鋼素材の五大元素に、クロムとニッケルを加えて作られます。
SUS材の中でもクロムとニッケルの含有量によって、下記3つに分けられます。
加工もしやすく強度もあるため、利便性が高く、さまざまな用途で用いられます。
硬い素材が必要なときはSK材を使いますが、SK材では硬さや耐摩耗性を満たせない場合にSK~材が使われます。
SK~材は合金工具鋼とも呼ばれ、鉄鋼素材の五大元素にクロム、バナジウム、タングステンを添加して、硬さや耐摩耗性、耐熱性を向上させています。
硬度を活かし、切断用の器具やドリルによく使われます。
ただ、SK〜材自体に硬さがあるため、材料自体の加工性は良くありません。
機械構造の部品では主に炭素鋼と合金鋼が使われますが、より強度と靭性が求められる場合には合金鋼が使われます。
合金鋼は炭素鋼と比べて素材の中心部まで焼き入りしやすく、機械的性質に優れています。
強度と粘り強さが必要なシャフトや、歯車などの部品として使われることが多いです。
超硬合金は名前のとおり、非常に強い硬度を持ちます。
下記の素材に、鉄やコバルト、ニッケルで結合した合金鋼です。
超硬合金は耐摩耗性が良く高温でも硬度が低下しないため、スローアウェイの旋盤用工具のチップや工具などに使用されます。
ただ、価格が高く粘り強さが小さい、衝撃に弱いことなどがデメリットです。
ハイテン鋼は高張力鋼とも呼ばれ、引っ張りの強さが非常に強いのが特徴です。
具体的には、汎用的な炭素鋼SS400と比べ、ハイテン鋼は2倍以上の引っ張り強度があります。
薄くて丈夫なため、電車・自動車のボディに使われており、車体の軽量化や燃費向上に役立ちます。
他にも、ガスタンクや側溝の排水蓋などに使われることが多いです。
ハイテン鋼は今なお成分や製法の研究が進められており、今後の進歩が期待できます。
鉄鋼は主に炭素鋼4種、合金鋼5種から選択します。よく使われるのは、汎用性の高いSS400やS45Cです。
鉄鋼の選び方の主なチェックポイントは、下記のとおりです。
鉄鋼にはそれぞれ特性があるため、最適なものを選びましょう。
鉄鋼材料・材質には、さまざまな種類があり、主に下記の3つに分けられます。
炭素鋼と合金鋼はその中でもさらに細かく分かれ、それぞれ特性を持っています。
特性を知っていれば適切な鉄鋼を選べるため、本記事を参考に把握しておきましょう。
【関連記事】大型の門型五面加工機とは?特徴や弊社の加工実例をご紹介 【関連記事】推進工法とは?小口径管推進工法などの種類とメリットをわかりやすく解説