タップ加工とは、ねじを受け入れる側の「めねじ(雌ねじ)」を作る加工のことです。
ドリルなどであけた下穴に、工具を使って溝を掘ったり、押し広げたりしてめねじを作成します。
「タップ加工を依頼する前に、定義や種類について知りたい」と考える方もいるでしょう。
混同しがちなドリル加工やリーマ加工などもあるため、基礎的な情報をしっかりと押さえておくことが重要です。
そこで本記事では、タップ加工の概要や他の加工方法との違いを解説します。
タップ加工のやり方や使用する工具についても紹介するので、参考にしてください。
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タップ加工とは、下穴に対してねじを受け入れるための「めねじ」を作る加工のことで、めねじを作成する工具を「タップ」と呼びます。
タップ加工には以下の2タイプがあり、加工方法に違いがあるのが特徴です。
それぞれの特徴について、具体的に解説していきます。
切削式タップ加工とは、めねじの径に合った下穴を作成してから、切削式タップを使ってねじ谷と呼ばれる溝を掘る加工のことです。
正確なサイズの下穴径を準備することが重要なポイントで、下穴表で確認するとミスをするリスクを回避できます。
その他の下穴径の計算方法は、以下の通りです。
ねじ呼び径とはねじの直径のこと、ピッチとはねじ山間の長さを意味します。
また、ひっかかり率とは、ねじ同士が噛み合う高さと基準となるねじ山の高さの比率のことです。
切り屑が発生することから、作業中は屑の処理に気を配ることも求められます。
転造式タップ加工とは、下穴に力を加えて広げることで、ねじ山と谷を作り出す加工のことです。
また、転造とは素材に強い力を加えることにより成形する加工方法で、塑性(そせい)加工とも呼びます。
金属が硬すぎたり、逆にもろすぎたりすると上手く加工できないのが難点です。
本来であれば切削する部分を圧縮するため切り屑が発生せず、ゴミが出ないというメリットがあります。
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【関連記事】切削加工3種類を解説!旋削加工・フライス加工・穴あけ加工とは
タップ加工以外にも以下のような穴をあける加工方法があります。
それぞれの加工方法について、特徴を解説します。
ドリル加工は、回転する刃により対象の素材を削り取って穴をあける加工のことです。
ねじれのあるドリルを利用して穴をあけるのが一般的ですが、さまざまなタイプの形状があります。
ドリル加工の種類は、以下の通りです。
タップ加工自体は穴をあけられないため、タップ加工前にドリルを利用します。
リーマ加工とは、ドリルなどであけた穴をさらに広げたり、精度を上げたりする加工方法です。
ドリルで穴をあけると真円度が目標値をクリアできず精度が限られるため、リーマと呼ばれる工具によって整えます。
リーマ加工は、仕上げの段階で実施する手法であり、ドリルのように穴あけ加工はできないので、用途に合わせて使い分けるのが基本です。
タップ加工の工程は、以下の3つです。
頭の中で具体的にイメージしながら、流れをチェックしていきましょう。
まず、めねじを作るための下穴をドリルなどを用いて作成します。
下穴をあける際の注意点は、以下の通りです。
使用したいねじのサイズに応じていない下穴だと、タップが途中で停止したり、ねじ山を切れなかったりするので注意する必要があります。
大きな穴をあける場合には、2〜3回に分けて広げていくと美しく仕上げることが可能です。
また、垂直に下穴をあけないと、最悪の場合タップが途中で折れるリスクもあります。
続いて、切り屑の詰まりを防止するために、下穴に切削油を注入します。
切削油を利用しないと、切り屑の詰まりのためにスムーズに作業できないのはもちろん、タップを長期的に利用できなくなるため注意が必要です。
切削油の種類は、以下の2つに分けられます。
素材の性質や使用する機械に合わせて、適した切削油を選定することが大切です。
最後に、タップを回してねじ山を作り、ねじ込んでいきます。
下穴が垂直であってもねじ山作成時に斜めになる可能性もあるので、タップを垂直に立ててねじを噛ませることが必要です。
ねじ込む際には、以下のように実施します。
無理やり回転させるとタップが折れる危険性があり、回りが悪いと感じるときは戻しながら慎重に作業することが重要です。
タップ加工で使用する工具は、以下の3種類です。
各工具の特性や注意点について、わかりやすく解説します。
スパイラルタップは、らせん状に刃が切れているタップのことで、止まり穴(突き抜けない穴)に使用します。
刃を回転させると切り屑が上方向に排出される構造となっており、屑が落ちて作業の邪魔になるのを防げるのが特徴です。
切り屑がつながりやすい柔らかな金属に適していることから、アルミや銅などに対して利用します。
ポイントタップは、先端の食付き部ねじれと勾配をつけたポイント溝を持つ種類のタップのことです。
切り屑が上方向に出るスパイラルタップとは対照的に、ポイントタップは屑が下向きに出る特徴があり、通り穴(突き抜ける穴)に対して使用します。
切り屑が穴の中で詰まらずに利用できることから、安定して加工できるのがメリットです。
ただし、止まり穴の場合には奥に切り屑が詰まってしまうので、ポイントタップは利用できません。
ロールタップは、圧力をかけてネジ山を盛り上げる仕組みとなっており、転造式の場合に使用します。
スパイラルタップやポイントタップとは異なり、溝を持たないのが特徴です。
切削するのではなく圧力で変形させていくことから「切り屑が出ないので掃除の手間が省ける」「ネジ山の耐久性が向上する」などのメリットもあります。
タップ加工を正確に実施するためには、以下の3つのポイントに気をつける必要があります。
失敗すると「ねじを締められない」などのトラブルが発生するため、しっかりと注意点を確認しておきましょう。
タップ加工を含めてさまざまな加工の基礎ですが、加工素材を固定することが重要です。
加工素材の固定が緩いと、以下のようなトラブルが発生します。
下穴をあけるときやタップで加工するときは、作業前に素材がしっかりと固定されているかチェックすることがポイントです。
めねじの精度を確保するため、正しいタップを選定することが大切です。
タップ選定は、以下の3つに注意する必要があります。
加工素材の硬さや性質、サイズに合ったタップを使用しないと、歪みが発生するなど必要条件を満たしためねじを作成できません。
下穴のタイプによって切り屑の排出の仕方が変わるため、通り穴と止まり穴の種類に合ったタップを選ぶことが求められます。
スムーズにタップ加工を実施するため、切削式・転造式のどちらの場合でも切削油の使用が必須となります。
切削油を使用するメリットは、以下の通りです。
タップ加工では潤滑性が重視されるので、主成分が油の不水溶性切削油を利用する傾向にありますが、火災予防の観点から水溶性切削油を使うケースもあります。
タップ加工とは、ねじを受け入れる側の「めねじ」を作成する加工のことを指します。
タップ加工に利用する工具は、スパイラルタップ・ポイントタップ・ロールタップの主に3つです。
また、穴をあけるドリル加工や、穴を広げるリーマ加工とは異なる加工方法となります。
正しいタップを選定したり、切削油を使用したりすることで、精度を確保したねじを作成することが可能です。
南条製作所では、タップ加工の実績やノウハウが豊富にあります。
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